家の物を探す時間をなくしたくて、整理整頓ソフトを作った
2026年9月5日
整理整頓ソフトの製品版が、ようやく完成した。
正確に言うと、ソフトそのものは少し前から動いていた。でも、自分で使えるものと、人に売れるものは全然違う。
ログインできるだけじゃ駄目だし、家財を登録できるだけでも駄目。無料で試せる仕組み、購入者だけが製品版を使える仕組み、家族との共有、問い合わせへの備え、利用規約、説明書、商品画像まで揃って、やっと「完成」と言える。
今日はその最後の配布セットまで作り終えた。
長かったけど、ここまで来た。
きっかけは、物をどこに置いたか分からなくなること
家に物が増えると、何を持っているか分からなくなる。
持っているはずなのに見つからない。どこへしまったか思い出せない。家族に聞かれても、すぐに答えられない。探しても出てこないから、結局また同じ物を買う。
こういう小さな面倒は、一回だけなら大したことがない。でも、何度も続くと時間も金も無駄になる。
だったら、家にある物を台帳へ登録して、名前や場所からすぐ探せるようにすればいい。
最初はそれだけの考えだった。
物の名前、置いてある場所、分類、状態、数量、メモ。必要な情報を記録して、檢索すれば出てくる。単純だけど、実際に日常で使える形にするには、思ったより考えることが多かった。
最初は自分で使うための作業版だった
初期の整理整頓ソフトは、Google Apps Scriptとスプレッドシートを使った作業版だった。
家財を登録して、檢索して、状態を変える。台帳を増やして、用途ごとに分ける。スマートフォンでも見られるようにする。少しずつ必要な機能を足していった。
この段階で大事にしたのは、見た目よりも「本当に家の中で使えるか」だった。
スマートフォンで開いたのにパソコン向けの表示になったり、最初の画面が長く止まったように見えたり、ショートカットが重複したりもした。そのたびに原因を探して直した。
檢索も、ただ文字が完全に一致した物だけを出すのでは不便だった。普段の言い方で探せるように調整し、物の状態変更も追加した。
実際の家財を入れずに試しても意味がないから、自分の家の物を登録した。最初に123件を移し、その後の追加と変更も同期して、最終的に131件になった。
これは見本用に並べた架空のデータじゃない。俺が実際に使う家財台帳だ。
ここで初めて、このソフトは実験から道具になった。
自分専用から、家族で使える製品版へ
作業版を使っているうちに、自分だけが使えればいいわけじゃないと思うようになった。
家の物は、一人だけの物とは限らない。家族にも「何がどこにあるか」が分かった方がいい。パソコンだけでなく、スマートフォンからも使いたい。それぞれが自分のアカウントでログインし、必要な台帳だけを共有できた方がいい。
そこで、複数の利用者が使える製品版を新しく作り始めた。
製品版では、一人ずつログインする。台帳には所有者がいて、家族を招待できる。共同編集できる人と、見るだけの人を分けられる。共有をやめることもできる。
画面にボタンを隠すだけでは安全とは言えないから、データベース側でも「その人が本当にその台帳を見ていいか、変更していいか」を確認する形にした。
利用者からは難しい仕組みが見えなくてもいい。でも、家族ごとのデータを扱う以上、裏側は曖昧にしたくなかった。
ログインは、動けば終わりじゃなかった
製品版ではGoogleログインとメールログインの両方を用意した。
Googleアカウントを使える人は、そのままログインできる。Googleを使いたくない人や別のメールアドレスを使いたい人は、メールからログインできる。
ところが、ここにも実際に使ってみないと分からない問題があった。
パソコンでログインしようとしているのに、確認メールをスマートフォンで開くと、ログイン状態になるのはスマートフォンの方だった。仕組みとしては当然でも、使う側から見れば「パソコンへログインしたいのにできない」と感じる。
そこで、メールに表示された8桁のコードをパソコンへ入力してログインできるようにした。
認証メールも最初は英語だった。設定を変えただけでは消えてしまったり、送信回数の制限へ引っかかったりした。日本語のメールを安定して送れるように、送信方法とテンプレートを整えた。
Googleログインも、開発者だけが使える状態では製品にならない。外部の利用者が本番で使えるところまで公開設定を進め、実際の環境で確認した。
ログインという一つの機能だけでも、画面にボタンを置くだけでは完成しない。別端末、メールの言語、送信制限、本番公開。使う場面を一つずつ想像して潰していく必要があった。
無料版を作った理由
このソフトは、ログインと無料版の利用に料金を取らない形にした。
無料版では、台帳1冊、家財30件まで使える。
いきなり買ってもらうより、まず自分のパソコンやスマートフォンで動くか試してほしかった。ログインできるか。家財を登録しやすいか。檢索が自分に合うか。実際に触ってから判断できる方が、お互いに安心できる。
もっと登録したい、台帳を分けたい、家族と共有したいと思った人だけが製品版へ進めばいい。
製品版では台帳数と家財数の上限がなくなり、家族共有と台帳内AIが使える。月額ではなく、買い切りにした。
無料版は単なる体験画面ではない。30件までなら、そのまま実際の台帳として使える。必要になった時点で製品版へ切り替えられる。
シリアルを「安全に一回だけ使える」形へ
製品版を販売するには、購入した人だけが有効化できる仕組みが必要だった。
シリアルコードを発行し、登録したアカウントへ製品版の権利を付ける仕組みを作った。シリアルは一回だけ使え、同じコードを別の人が使い回すことはできない。
データベースにはシリアルそのものを保存しない。照合に必要な情報だけを保存する。万が一データを見られたとしても、そこから購入者へ渡したコードをそのまま取り出せない設計にした。
BOOTHの注文番号ごとに一つのシリアルを発行し、同じ注文番号で二重発行しない仕組みも作った。
管理者が家族や協力者へ無料で渡す場合もある。そのため、管理者だけが無料提供用シリアルを発行できる機能も用意した。一般の利用者には画面自体を見せず、裏側でも管理者かどうかを確認する。
途中では、注文ごとに専用のWindowsアプリを作り、そのアプリを開くとシリアルが表示され、Webページへ案内する方式も考えた。実際に仕組みまで作った。
でも、考え直した。
注文ごとに別の実行ファイルを作るのは、運用が重い。購入者にとっても、知らない実行ファイルを開くのは不安がある。Windows以外では使えないし、ウイルス対策ソフトに警告される可能性もある。何より、シリアルを含むファイルを注文ごとに管理することになる。
作れることと、売り方として正しいことは別だ。
最終的には、購入者ごとの一回用有効化リンクをBOOTHのメッセージで送り、リンクを開いてログインし、「製品版を有効にする」を押す方式に変えた。リンクがうまく使えない場合に備えて、予備のシリアルも同じメッセージに載せる。
この方が単純で、パソコンでもスマートフォンでも使える。購入者へ余計な実行ファイルを開かせなくて濟む。
一度作った物を捨てて方針を変えるのは少し悔しい。でも、不安が残る方式をそのまま採用するよりずっといい。
有効化リンクも、一度では完成しなかった
有効化リンクを作った後、本番に近い試験を行った。
ところが、シークレットウィンドウでリンクを開くと、購入情報を読み取れない画面になる場合があった。ログインを挟んだときや、別のタブ、別の端末へ移ったときに情報が残らないことがある。
そこで、リンクから受け取った情報をブラウザー内へ一時的に保持し、ログイン後も有効化を続けられるようにした。
それでも駄目な場合の逃げ道も必要だった。有効化画面へ購入者専用リンク全体、またはシリアルを直接貼り直せる入力欄を追加した。
正常な経路だけを作って「完成」と呼ぶのは簡単だ。でも、利用者が途中で別の画面へ移動したり、別端末でメールを読んだりするのは普通に起こる。
失敗したときに戻れる道を作っておくことも、製品の一部だと思う。
AIは便利だけど、絶対ではない
台帳内AIも付けた。
登録した物を探したり、ソフトの使い方を質問したりできる。言葉が完全に一致しなくても、会話に近い形で探す手助けになる。
ただ、俺はAIや自動機能が絶対に正しいとは思っていない。
便利ではある。でも、見落とすこともあるし、間違うこともある。大切な物の場所や正確な数量まで、AIの答えだけを信用する作りにはしたくなかった。
だから各台帳に「台帳を直接見る」ボタンを付けた。
AIを通さず、登録濟みの家財一覧をそのまま見られる。通常の檢索も使える。正確な情報を知りたいときは、台帳と実物を確認する。
AIは主役ではなく、探すのを手伝う補助機能。
これは説明書や商品説明にもはっきり書いた。
新しい機能を目立たせることより、利用者が間違った使い方をしないことの方が大事だと思っている。
アイコンと商品画像を作り、ようやく「商品」になった
機能が完成した後は、BOOTHで販売する準備に入った。
商品名は「整理整頓ソフト 製品版」。価格は買い切り1,980円。
家、整理された収納、虫眼鏡を組み合わせた緑色のアイコンを作った。ブラウザーのアイコンだけでなく、デスクトップのショートカットにも設定した。
商品画像には「家の物が、すぐ見つかる。」という言葉を入れた。
このソフトが何をする物なのか、一番短く言えばこれだと思う。
説明文も最初は、よくある丁寧な商品紹介になっていた。でも、それでは自分が話している感じがしなかった。
家に物が増えると、どこに置いたか分からなくなる。持っているはずなのに見つからない。そういうのを何とかしたくて作った。
この言い方の方が、自分には合っている。
格好よく見せるための広告ではなく、なぜ作ったか、何ができるか、何に注意してほしいかを、そのまま話す文章へ書き直した。
BOOTHへ渡す完成版
最後に、購入者がダウンロードする利用開始セットを作った。
中には次の物を入れた。
- はじめに読む案内
- ログインから家財登録、家族共有までの利用開始ガイド
- 利用規約
- プライバシーポリシー
- 対応環境、問い合わせ、返金についての案内
- 製品版をブラウザーで開くファイル
- README
- 整理整頓ソフトのアイコン
PDFは全部のページを画像にして、文字切れ、重なり、日本語の表示、見出しの位置まで確認した。
この共通ファイルには、購入者ごとのシリアルを入れていない。シリアルと有効化リンクは注文を確認してから、BOOTHのメッセージで一人ずつ送る。
最初に考えていた「専用アプリをダウンロードしてシリアルを表示する」方式ではなく、誰に渡しても同じ安全な利用資料と、注文ごとに分けた有効化情報を組み合わせる形に落ち着いた。
これで、BOOTHへ登録できる販売用ファイルまで完成した。
完成した機能
今の整理整頓ソフトでは、次のことができる。
- Googleアカウントでログイン
- 日本語メールでログイン
- 別端末へ届いた8桁コードを使ってパソコンでログイン
- 家財の追加、編集、削除、檢索
- 台帳の追加、削除、名前変更
- 台帳の家財一覧を直接確認
- 無料版は台帳1冊、家財30件まで利用
- シリアルまたは専用リンクで製品版を有効化
- 製品版では台帳数と家財数の上限を解除
- 家族を招待して台帳を共有
- 台帳内AIで家財檢索と使い方案内
- 管理者限定の無料提供用シリアル発行
- BOOTH注文番号ごとの一回用シリアル発行
- パソコンとスマートフォンの両方に対応
書き出すと多い。
でも、一つずつ必要になった理由がある。
完成して思うこと
今回一番感じたのは、「動く」と「安心して使える」の間には、かなり距離があるということだった。
ログインできる。でも別端末ではどうなるのか。
シリアルを発行できる。でも同じ注文で二重に発行されないか。平文を保存していないか。
AIで探せる。でも間違ったときに台帳を直接確認できるか。
商品を売れる。でも購入者は何をダウンロードし、どこから始めればいいのか。
一つの機能を作るたびに、その周りにある問題が見えてきた。
途中で失敗もした。有効化リンクがうまく情報を引き継げなかった。シリアル処理の暗号関数が正しく参照されていなかった。メールの設定が消えたり、英語になったりした。販売方法も一度作った後で変えた。
でも、問題が見つかったこと自体は悪くない。販売する前に見つけて、直して、もう一度試せた。
最初は、自分の家の物を探すための小さな道具だった。
今は、無料で試せて、必要なら製品版へ切り替えられて、家族とも使えるソフトになった。購入者ごとの権利を安全に渡す仕組みも、説明書も、商品画像もある。
完璧とは言わない。ソフトに絶対はないし、これから実際の利用者が触れば、もっと分かりやすくできる場所も見つかると思う。
次は、大きな機能を増やす開発ではなく、完成度を上げる段階に入る。
ただ、もう残っていることは本当に少ない。
まずはBOOTHでシークレット公開し、テスト注文からダウンロード、有効化、製品版登録までをもう一巡する。それで問題がなければ一般公開する。
ここまで作った以上、最後まできちんと届けたい。
整理整頓ソフト製品版、完成。
長かった。
でも、自分で実際に使える物を、自分の手で販売できるところまで持ってこられた。
それが一番うれしい。
